2014年6月13日金曜日

英紙テレグラフの記事「写真集の現在」について

2014年4月19日の英紙テレグラフに掲載された記事「写真集の現在」("The photobook today" by Lucinda Everett/Telegraph)について紹介。かいつまんでの意訳なので、詳しくは直接の記事や、リンク先を参照してもらえれば幸いです。

記事は、デジタル時代になって、誰もが写真をオンライン公開し、安価で素早く自費出版ができる今、改めて写真集とは何かを、写真集に関わる人々のコメントをもとに考察したもの。


最初は、2014年春、ファイドン(Phaidon)から、写真集の歴史を紹介する『The Photobook: A History』を出版した執筆者のジェリー・バッジャー(Gerry Badger)のコメント。
「昨今の写真集は刻々と変化し、混乱しているように見えるかもしれないが、写真集ではギャラリーのように確立された作家のスタイルというプレッシャーがないので、様々なジャンル、ストーリー、スタイルがミックスされたものがここ数十年間の特徴となっており、それは不思議なことではない。自費出版は新しいものではないが、ウェブによる革命により、現在大学生が最初に行うことの一つにまでなっている。」

参考:ジェリー・バッジャー(Gerry Badger)



参考:
写真集と写真について語るジェリー・バッジャー(今回のテレグラフのインタビューとは別のものです)



確かにジェリー・バッジャーの『写真集の歴史』でも自費出版の本が多数入っている。中でも、伝統的な出版社で働いていたブルーノ・チェスカル(Bruno Ceschel)が2010年に自費出版推進のために立ち上げたプロジェクト「Self Publish, Be Happy」の中から選りすぐった『Self Publish, Be Naughty』は、その要といえる。ブルーノ・チェスカルのコメント。
「ここ10年から15年の間、最新の写真集から、過去の写真集の収集まで、みんな注目するようになってきたんだ。ブックフェアでもね。新しい写真に対して、施設がサポートやスペースの提供をしてくれないから、写真家は、写真集の中にそういう場を見つけたんだ。ただ、写真集だけというわけではないんだ。今の若い写真家は印刷するのと同じくらい、オンラインで写真を見せることに楽しみを感じているんだ。特に若い写真家はそこに区別を設けていなくて、タンブラーで何度もリブログされた写真を今度は写真集へ、といった感じで全く別のものなんだ。また、私は、デジタル版で本当に興奮させてくれる何かを待っているんだ。それはPDFではないだろうね。ただもしそういうものが現れたら圧倒されるだろうね。」

参考:
「Self Publish, Be Happy」
『Self Publish, Be Naughty』(2011)
tumblr.(タンブラー)
・自費出版について語るブルーノ・チェスカル(今回のテレグラフのインタビューとは別のものです)



自費出版支援サイト「Blurb(ブラーブ)」の創始者アイリーン・ギッティンズ(Eileen Gittins)のコメント。
「オンラインのデジタル写真集は、写真家を満足させるものではないと思うの。写真家なら、もっとじっくり向き合って、ゆっくりページを見てもらいたいと願っているわ。インスタグラマーの写真集を作ったときは、みんな、魔法のようだ、やったぜ!って感じだったわ。1冊を1万部売るよりは、それぞれ1部の1万冊の写真集を作りたいわね。でも、ブラーブのサービスで作ったあるアメリカ人の写真集がギャラリーに認められ、奨学金が出たなんていうこともあったわ」

参考:
Blurb(ブラーブ)
ブラーブのインスタグラム写真集(The Instagram photo book)
・ブラーブについて語る創始者のアイリーン・ギッティンズ(今回のテレグラフのインタビューとは別のものです)



レアな写真集や写真のアーカイブディーラーであるオリバー・ウッド(Oliver Wood)のコメント。
「写真集市場は本当のところ、ちょっと誇大化されてたと思う。新しい世代は、レアなものではなく、もっと最近の写真集を買って、コレクションを作るんだ。もしあなたが1ヶ月に20冊の本を買うとしたら興奮すると思うけど、30ポンドで1冊の写真集を買うことはあまりにも安易な間違いかもしれないね。本当の眼を養う人々が出てきたことはいいことだと思うよ。伝統的なパブリッシャーはより良い本を作り、ヒットがそのコストを当然のものとするだろうね。一方、小さな版元や自費出版は、自分たちのスキルを磨き、大きな出版社ができない部分を埋めるだろうね。もちろん、コレクターはどこにもいかない(ついてくる)」

参考:
オリバー・ウッド(Oliver Wood)

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